シンセティックレザー
加工ワンポイント

 

シンセティックレザーとは天然皮革のような外観と質感を持つ、レーザー加工専用に開発された合成皮革です(素材の詳細はシンセティックレザーの特長のページをご確認ください)。
レーザー加工専用として製造されたこちらの素材ですが、レーザー加工を行う上でいくつか注意点やポイントがあります。

こちらではお客様からのよくあるご質問に対しての解決方法や、実際に我々がシンセティックレザーを加工する際に気を付けている点をまとめてご紹介します。
今までシンセティックレザーを加工してみて「どうしても上手く加工が出来ない」と感じている方や、「こういう症状の場合はどうすれば?」といった疑問がある方は必見です。
また、あまり知られていない加工方法もご紹介。新たなシンセティックレザーの可能性が見つかります。

まずは基本的な加工方法を動画でご確認ください

 

 

焦げや粉塵汚れ

 

どの素材でもそうですが、シンセティックレザーもレーザー彫刻・切断を行うと削りカスや熱による気化ガス等で汚れが発生することがあります。
また特に切断加工時に起こりやすいのですが、焦げ汚れが発生する場合もあります。
このような汚れが発生してしまうと、加工後の後処理に大変時間を費やすことになってしまいます。
そのためこのような汚れ等が発生しないように工夫する必要がありますし、仮に発生してしまった場合でもある程度のカバーが可能ですので下記の方法を試してみてください。

・適正な加工設定で加工
・汚れを拭き取る際の注意
・マスキングテープで保護

第一に適正な加工設定で加工を行うことが最も大切となってきます。
上記基本的な加工方法動画にて参考設定値をご紹介しておりますので、皆様がご使用のレーザー加工機の搭載出力によって微調整してください。
感覚的なコメントになってしまいますが、彫刻部分は辛うじて爪が引っかかる程度=凹凸がなんとか判断出来る程度の彫刻の深さで十分です。
それ以上深さが出るような彫刻設定ですと、下の写真のように粉塵汚れが発生してしまいます。

 



全面に粉塵汚れがついた様子

適正な加工設定値で加工を行えば、シンセティックレザー表面に粉塵汚れは極力発生しない仕上がりが可能です。

またレーザー彫刻時に使用するエアアシスト機能の噴射圧力が強すぎると、粉塵汚れがシンセティックレザーの表面に広がりやすくなってしまいます。
レーザー加工時の熱を冷却し物の延焼を防ぐためのエアアシスト機能ですが、極力弱めの噴射に抑えてあげるとシンセティックレザー表面に粉塵汚れが発生しにくくなります。
エアアシスト機能を弱めに設定してもシンセティックレザー彫刻の適正設定値は非常に低出力となりますので、他の吸塵機能等が問題無く機能していれば、加工時に火が上がってしまうことも無いでしょう。

 



適正な設定で加工した仕上がり

上の写真は適正な設定で加工を行った際の出来上がりです。
適正な設定で加工した際でも、状況によっては多少の粉塵汚れが付着する場合はあります。
特に写真のティールカラーやピンクカラー等、明るい色合いのもの程汚れが目立ちやすくなります。

LASER STYLE素材の二層板等は汚れを落とすためのアフターケアとしてアルコールやパーツクリーナー等で拭き落とすことを推奨していますが、シンセティックレザーでも同じ感覚で拭き落としを行ってしまうと逆に汚れが周りに伸びて行ってしまい、全体的に汚れが広がってしまう可能性があります。
また、拭き落とす際にあまり擦り過ぎてしまうとシンセティックレザー表面にダメージを与えてしまいます。

その為、汚れを拭き落とす際はパーツクリーナー等でサッと軽く拭くだけにするか、もしくは少量の中性洗剤で優しく擦りぬるま湯で洗い流す方法もお試しください。
シンセティックレザーは耐水性がありますので水洗いも問題無く可能です。

アクリル板や木材をレーザー加工する際、加工面にマスキングテープを貼って保護することは良く見られる方法ですが、シンセティックレザーを加工する際も有効な方法です。
下の写真の右側はマスキングテープ有、左側がマスキング無で加工した様子です(分かりやすくする為、多少強すぎる出力設定で加工しています)。

 



左側がマスキング無し 右側がマスキング有り

注意点としては、マスキングテープの粘着力を吟味する必要があるということです。
粘着が弱すぎてしまうとレーザー加工時に剥がれてしまい、マスキング=保護の意味を成さなくなってしまいます。
逆に粘着が強すぎると加工後マスキングテープを剥がす際にシンセティックレザーの表面を荒らしてしまい、ダメージを与えてしまいます。
そのため使用するマスキングテープ選びは重要です。

LASER STYLEで扱っているサプライツール「3Mマスキングテープ」は、粘着力が絶妙でしっかりとシンセティックレザーの表面を保護してくれます。
また「アプリ粘着マスキング」は幅広のサイズをご用意しておりますので、大きい面積の加工をする際には非常にオススメです。

 

 

 

マスキングテープを貼る際はシンセティックレザー表面を軽く拭いてから、シワやたわみ・空気が入ってしまうのを出来るだけ防ぐように貼ってください。
また貼り付けた後は念のため、柔らかいヘラ等で軽くこすりシンセティックレザー表面にマスキングテープを圧着してください。
加工後はマスキングテープの表面に加工による粉塵汚れが付着している場合がありますので、それがシンセティックレザー表面に付いてしまわない様に慎重に剥がしましょう。

貫通や彫刻ムラ

 

下の写真は「シンセティックレザー ビンテージ/ゴールド」を加工したものです。
本来であれば彫刻した部分の色は薄めのゴールドカラーが露出するはずなのですが、黒いカラーで印字&デザイン彫刻されてしまっています。

 



オーバーパワーでゴールドカラーの層を貫通してしまった

これは強すぎる出力=オーバーパワーで彫刻をしてしまった結果となります。
シンセティックレザーの中でも人気カラーの「ブラック/ゴールド」「ブラック/シルバー」「ビンテージ/ゴールド」は彫刻すると光沢のあるゴールドカラーやシルバーカラーが露出する構造となっています。
ただしこのカラーの層は非常に薄くなっており、オーバーパワーで彫刻をしてしまうとカラーの層を貫通してしまいその下の黒色が露出した仕上がりになってしまいます。

 



適切な出力で加工した様子

こちらのページ上部の「基本的な加工方法」動画をご確認いただき、適正な設定で彫刻を行えば上の写真のようにキレイな金属色に仕上がります。
先にも記載しましたが彫刻部分は辛うじて爪が引っかかる程度=凹凸がなんとか判断出来る程度の彫刻の深さで十分です。
もし彫刻面が黒くなってしまった場合、彫刻部分の周りにメタル色が薄っすら見られる状態であればオーバーパワーになってしまっている証拠ですので加工出力を弱めましょう。 

シンセティックレザーは薄く柔らかい素材です。
それが商品化する際はメリットにもなるのですが、保管方法によっては下の写真のようにクセや反り・折れ曲がりが出来やすいというマイナスの点もあります。
そのままレーザー加工をすると彫刻の色ムラや、切断も切れるところと切れないところが発生する等、仕上がりムラが発生してしまいます。

 



クセがついてしまったシート

保管方法に注意していただくのはもちろんですが、レーザー加工機にセットする際もたわみ等が発生しないよう養生テープ等でピンと真っすぐ張り詰めて固定するようにしてください。
ここで妥協をしてしまうと、ある部分では彫刻がキレイに仕上がるけれども、別のある部分ではキレイに仕上がらない。。。といった現象が発生してしまいます。
特に大きい面積を加工する際や、シンセティックレザー全面を加工する場合等は、4辺をしっかりと固定してから加工を行ってください。

 



加工テーブルにしっかりと固定

シンセティックレザーの裏地

 

普段全くといって良い程注目されていないであろうシンセティックレザーの裏側の生地ですが、実はこちらにもレーザー彫刻が可能です。
表面よりも多少強い出力で彫刻加工を行うことにより、はっきりとしたコントラストを得ることが出来ます。
表面に比べると加工設定はシビアでは無いので思い切って彫刻してみましょう。

 



裏地に彫刻した様子

シンセティックレザーの裏面が無地のまま製品作製するより、より高級感やデザイン性がアップします。
またシンセティックレザーの裏面は製品構造上、どうしても小傷やムラなどが見られる場合があります。
これは商品の不具合では無いのですが、この裏面にパターンや図柄を広い面積彫刻することにより小傷やムラを上手くカバーして隠すことが可能です。
デザイン性と利便性を両方兼ね揃えた加工方法です。

 

 


裏地彫刻を活かしたアイテムづくり

 

また、このシンセティックレザーの裏地の生地は剥がすことも可能です。
シンセティックレザーの厚みは合計でおおよそ1.2mm厚ですが、製品化する際に少しでも薄くしたい場合があると思います。
例えば何かの製品に貼り付けて使用する場合、その厚みが出っ張りとなりデザイン性を損ねる場合があります。
裏地を剥がすことによりその厚みを少しでも薄くして、さらにシンセティックレザーを活用することが可能になります。

 

 

 



裏地を剥がした様子

シンセティックレザーの角に針やカッターなどで小さな切り込みを入れていただき、ゆっくり剥がしてみましょう。
どうしても剥がしにくい場合はシンセティックレザー自体をぬるま湯に浸すことにより、簡単に剥がれるようになります。
シンセティックレザー自体は非常に耐水性のある素材ですので、濡らしても色ムラ等の不具合は発生しません。
裏地を剥がした後のシンセティックレザーは薄くなった分、たわみや歪み等が起こりやすいので加工をする際はしっかりと固定して真っすぐ張り詰めてから加工をしてください。

 



薄くして2枚重ね

こちらは裏地を剥がしたグレーとピンクのシンセティックレザーを重ねて、デザインの隙間から別のカラーが覗くようなデザインでボトルラベルを作製しています。
裏地を剥がさずにこのような加工をしてしまうと全体が分厚くなり、デザイン性を損ねてしまいます。
まさに薄くするメリットを活かしたアイテムです。

 

 

シンセティックレザーを今まで加工したことが有る方も、まだ加工したことが無い方も、上記ポイントを抑えて加工にチャレンジしてみてください。
1度加工方法をマスターしてしまえば非常に加工しやすく、多くの可能性がある素材ということに気が付いていただけると思います。

 

 

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